動物捕獲話【ヤシガニ編】島の主の脚痕・・・
巨大ヤシガニ現わる
これは前編のクイナ捕食から数年後、別の家に引っ越してからの話です。
ある夏の夜でした。 家路へ車を走らせていると、アスファルトの田舎道の真ん中前方に大きな何かがいます。
何かと思い車を降りて見ると、これまで見たこともないほど大きなヤシガニ…! 左右の足先の全幅が80cmはありました。 それまで見たり捕まえてきたヤシガニでも大きくてせいぜい60cmくらいです。 それでも特大サイズてす。
ヤシガニは捕まえて食べるものだと考えていた僕は、その巨大ヤシガニもとにかく捕まえて車の中に入れました。 見れば見るほど大きなヤシガニでした。
その桁外れに大きなヤシガニには、なにか自然の畏怖に似たものを感じさせる迫力がありました。 その土地の主か島の主のように感じられました。
そのときヤシガニを入れる入れ物など当然なかったので、車内で動き回られると困るので大きい布か衣服でくるんで抱きつかせる方法で捕獲したと思います。
布か網に抱きつかせたうえでさらに布で包めば、ヤシガニの脚の自由を奪って動きを抑えられるわけです。 入れ物がないときに使えてヤシガニにも人間にも安全な方法です。
そのようにして巨大ヤシガニを捕獲し 車に閉じ込めた状態で再び帰路につきました。
車内に一晩監禁
あまりにも大きなヤシガニ、家に入れたところでヤシガニを入れておけるような入れ物はありません。 入れておける部屋もありません。 ヤシガニを車に乗せたままいったん家でじっくり考えます。
いつもなら早いうちに茹でてしまうところですが、自然の畏怖を感じさせるほどのヤシガニです。 土地の主、島の主を思わせるその巨大ヤシガニを食べていいものかどうか・・・
僕には迷いがありました。
家に入れたところで監禁できる場所がない、食べるにも迷いがある… 僕はとにかく一晩ヤシガニをそのまま車に乗せて監禁しておくことにしました。
真夏の暑い夜なので、車内に熱がこもってヤシガニが弱らないように窓をわずかに約2cm開けて、ヤシガニが逃げられない状態にして一晩やり過ごしました。
そうして翌朝を迎え目覚めたときには、そのヤシガニを食べる覚悟はできていたと思います。
ヤシガニがいないっ!?
有難くいただく(食べる)心を決め、朝一番 車にヤシガニを見に行きました。
するとなぜか助手席の窓が開いています。
あれ? 開いているはずがないのに なんで?? 誰か来てヤシガニを盗っていったのか!?
僕は、誰かが夜中に来て 車の中にヤシガニの存在を見つけて盗っていったと思いました。 とにかく誰かが開けたと思いました。
しかしよく見ると、窓は開いているのではなく破られていました…! 助手席側のガラス窓は粉砕し、窓一面がきれいになくなっていたのです。
えっ・・・???
絶句です…。何事が起こったのか理解できません。 そしてその状況を見ながら考えるうちに事態が飲み込めました。
僕がわずかに2cmほど開けたその隙間を、あの巨大ヤシガニはその強力なツメを使ってこじ開けガラス窓を破ったのでした…
巨大ヤシガニの姿はもう影も形もありません、夜も開けぬ暗闇のうちにとうにどこかへ消えてしまったでしょう。
あのわずかなスキマから突破するとは・・・!
しばらくの間、僕は自然の生命の力強さに魅了されていました。
あれは島の主。 きっと食べなくてよかった・・・
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